自転車選手の新年

選手時代はお正月という年中行事はあってないようなもので、じっくり腰を据えてお正月を楽しむということは少なかった。
お屠蘇は飲んだが昼からは走ってきますと外に出ていた年も多かったし、夜も毎年恒例になっているすき焼きは食べ過ぎることもなかった。トレーニングと節制が始まっていたのだ。
一年の計は元旦にありとは言うものの、元旦に翌シーズンのトレーニング予定を立てていては少々遅い事がほとんどで、11月から始まるオフの間に12月から翌年のシーズンに導入される部分のトレーニングを、どのレースを狙うかで組み立てる。6月末や4月に行われていた全日本選手権が目標ならそこにピークを持っていくために約6〜8ヶ月のトレーニングを組み立てるのだ。
当時は身体のできていない時期だったので筋力トレーニングを組み込み、冬場は70キロまで体重が増えた年もあった。ちなみに痩せてしまった今の体重は63キロ。70キロまで増やした年のシーズン中は65キロほどにまで絞れていたので、単純に言えばピーク時から比べれば2キロの筋肉減だ。当時の筋力トレーニング導入前の体重や、走りに重点を置いた年のピーク時の体重と殆ど変わらないのだが、走ってる強度なんかも考慮すれば、私の体重における筋量は相当落ちているに違いないし、身体を観察しても各関節周り腱近辺の締まり具合は雲泥の差だ。ところで、よく走っている選手かどうかは筋肉近辺ではなく、この関節周りの脂肪量でよく判る。シマノに在籍していた時も、他の選手達の体の出来具合は、練習で一緒に走った時の強度と、その部分の絞れ方でよく判断していた。ということでオフトレのメインメニューは少々の体重増加に繋がってもしっかり出力が出る体作りと、その後の乗り込みが重要となるのは間違いないだろう。
今ではオフトレの重要性は周知の通りで、近年海外で活躍する選手たちはレースのグローバル化における南半球のレース数増加やレースシーズンの長期化も手伝い、しっかりとした乗り込みおよび体づくりが徹底されてきている。1月の今、もうシーズンは始まっていて、福島晋一氏が始めた海外合宿は重要度が認識されて参加者も増えているようだ。こういった基礎づくりはドーピングに手を染めるよりも長期的に見て稼ぎになるし、特に若い選手のレベルアップには欠かせない存在でもあるだろう。
スポーツとして楽しむ方々のトレーニング内容は、トレーニングの理論を良くごご存知の専門家に相談したほうが良いレベルまで上がってきている。モチロンそれをご自分で勉強して実践ということも考えられるが、最近では競技選手だった自身の経験に基づいたトレーニングプログラムを提供できる団体もできてきているので、そこに低価格で任せるというのも近道だ。
時間は限られている。
自転車選手というのは、ただでさえ時間の掛かるスポーツなのだ。新年もそう楽しんではいられない。
私は最近自転車選手より忙しい自転車店での自転車操業なので時間がないのだが。
今日も今日とて5日にせまるシクロクロスへの参加と明日の走り初めの準備。しかしその前に子供達の宿題を見なければならない。